それ、本当にエスプレッソ?マキネッタとエスプレッソマシンの深くて大きな違い

「イタリアでは一家に一台」と言われ、日本でも手軽に本格的なコーヒーが楽しめると人気のマキネッタ。
あのコポコポという音と立ちのぼる香りは、なんとも言えない魅力と愛着を感じますよね。
しかし、カフェ開業を目指す皆さんに、わたくし毛利から、今日は少し耳の痛い、でも非常に大切な話をさせてください。
Contents
インスタで話題になったマキネッタ
先日、マキネッタの投稿が反響を呼びました。
私たちサンマルコのInstagramで投稿したのがこちら
マキネッタは手軽に濃厚なコーヒーを抽出できる素晴らしい器具です。
動画内でも「美味しいエスプレッソ」「場所いらずのおいしいエスプレッソマシン」「簡単にエスプレッソができます」といったレビューを紹介したんですね。
実際、Amazonなどのレビューを見ても、マキネッタを「エスプレッソメーカー」として紹介し、その手軽さや味わいを絶賛する声が後を絶ちません。
しかし、動画は核心に迫りました。
多くの方が「マキネッタで作るコーヒー=エスプレッソ」と認識されていますが、厳密には、マキネッタで抽出されるのは「モカ」であり、私たちがカフェで提供する「エスプレッソ」とは異なるものなのです…!
この違いは、カフェを開業し、お客様に本物のコーヒー体験を提供したいと考える皆さんにとって、非常に重要なポイントです。
動画でも「エスプレッソとモカコーヒーは、ピッツァとピザトーストくらい違います。」と表現しました。この例えは上手いですか…?
エスプレッソとモカは似て非なるもの
動画でも触れましたが、エスプレッソとモカコーヒーの違いはいくつかあります。
圧力:美味しさを凝縮する魔法の力
<エスプレッソ>
エスプレッソの最大の特徴は、この高圧力による抽出です。約9気圧という高い圧力をかける。そうすることでコーヒー粉の持つ油分や微粉までも効率よく、かつ短時間で抽出することができます。
これによって、コーヒー豆本来の持つ甘みや酸味、苦味といった風味が凝縮されるんですね。濃厚でクリーミーな液体も生まれます。
この圧力を安定してかけるためには、ラ・サンマルコのような専用のエスプレッソマシンが不可欠です。
<モカコーヒー>
一方、マキネッタは、下部のボイラーで水を沸騰させ、その蒸気圧で湯を押し上げてコーヒー粉を通過させます。
この時の圧力は約1~2気圧程度。エスプレッソと比較するとかなり低い圧力です。
そのため、抽出される成分もエスプレッソとは異なり、よりすっきりとした、あるいは時には少し焦げ付いたような風味になることがあります。
抽出時間:一瞬に賭けるか、じっくり待つか
<エスプレッソ>
高圧力のおかげで、エスプレッソの抽出時間は非常に短いです。理想は20~30秒、一般的には約25秒とされています。
この短時間で抽出するため、バリスタは豆の挽き目、粉量、タンピング(粉を詰める圧力)などを精密に調整する必要があるんですよね。
時間が短すぎれば、未抽出で水っぽく酸っぱい味に、長すぎれば過抽出で渋く苦い味になってしまいます。まさに一瞬の芸術です。
<モカコーヒー>
マキネッタは、お湯が沸騰し、コーヒーが上部に上がりきるまでに数分かかります。
抽出時間が長い分、コーヒー粉と湯が接触する時間も長くなるのです。これにより、エスプレッソとは異なる風味特性が生まれる。
カフェオペレーションにおいては、この抽出時間の違いも重要です。
エスプレッソはオーダーが入ってから短時間で提供できますが、その分、一杯一杯への集中力と技術が求められます。
クレマ:エスプレッソの命であり証
<エスプレッソ>
エスプレッソの表面に浮かぶ、ヘーゼルナッツ色から赤みがかった茶色のきめ細かい泡の層。これがクレマです。
クレマは、高圧抽出によってコーヒー豆の油分と二酸化炭素が乳化してできるもの。
エスプレッソの豊かな香りを閉じ込め、滑らかな口当たりを生み出し、そして何よりも「これが本物のエスプレッソである」という証となります。
良質なクレマは持続性があり、スプーンでかき混ぜてもすぐに元に戻ろうとします。
<モカコーヒー>
マキネッタでも抽出されたコーヒーの表面に泡が立つことがありますが、これはエスプレッソのクレマとは全くの別物です。
圧力の違いから、クレマ特有のきめ細かさや持続性、豊かな油分を含んだ質感は生まれません。これは、モカコーヒーが劣っているという意味ではなく、抽出方法の違いによる特性です。
カフェで「エスプレッソ」として提供する以上、この美しいクレマは絶対に欠かせません。クレマのないエスプレッソは、お客様の期待を裏切ることになりかねませんから。
なぜ、カフェ開業にとって重要なの?
「まあ、少し味が違うくらいなら、マキネッタでもいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。実際、私もマキネッタを否定することは何もありません(笑)
しかしカフェ経営という視点から見ると、この違いは知っておくべきだと考えています。
たとえばお客様の期待とのギャップ。
お客様がカフェで「エスプレッソ」を注文する際、多くは「濃厚でクレマが乗った、あの特別な一杯」を期待しています。そこでモカコーヒーを提供してしまうと、「あれ?なんか違う…」という不満に繋がります。リピーターを増やすためには、この期待にしっかりと応えることが大切です。
もしくはメニュー展開の限界。
美味しいカフェラテ、カプチーノ、マキアート、アフォガート…これらの人気メニューは、質の高いエスプレッソがあってこそ成り立ちます。
エスプレッソの濃厚な風味とコクがミルクの甘みを引き立て、美しいラテアートもクレマがあってこそ描けるのです。
モカコーヒーでは、これらのメニューの魅力を最大限に引き出すことは難しいでしょう。
さらにはカフェのブランドイメージなんかもそうですね。
「あのカフェのエスプレッソは本物だ」という評価は、カフェの信頼性とブランドイメージを大きく向上させます。
逆に「なんちゃってエスプレッソ」を提供していると、コーヒー好きのお客様からはすぐに見抜かれてしまい、悪評が広がるリスクすらあるのです。
本物のエスプレッソは、飛ぶぞ?
カフェ開業は、多くの夢と情熱が詰まった素晴らしい挑戦です。これは私も大いに応援したい気持ちです。
だからこそ、提供するコーヒーの品質には徹底的にこだわっていただきたい。
マキネッタが家庭で楽しむ素晴らしい器具であることは間違いありません。でも同時に、プロとしてお客様をお迎えするカフェでは、やはり専用のエスプレッソマシンで抽出した本物のエスプレッソを提供することが大事なのです。
エスプレッソとモカコーヒーの違いを正しく理解し、お客様に感動を与えられる一杯を追求する。そのお手伝いができることを、サンマルコとしても心から願っています。
本物のエスプレッソの世界へ、一緒に「飛ぶぞ?」
ご不明な点や、エスプレッソマシン選びに関するご相談などございましたら、いつでもお気軽にラ・サンマルコまでお問い合わせください。
あなたのカフェの成功を、全力でサポートさせていただきます。
NEWS・BLOG
ニュース・ブログ一覧-
それ、本当にエスプレッソ?マキネッタとエスプレッソマシンの深くて大きな違い
-
【カフェ開業】後悔しないエスプレッソマシン選びの本質とは? プロが語る3つのポイント
-
イタリア国内でも違う!? エスプレッソ文化のトレンド
-
本場のエスプレッソ知識|5種類以上の豆をブレンドするって本当?!
-
カフェ開業に必須!エスプレッソを安定させる方法
-
深煎り豆でも酸っぱくなる理由とは?失敗を防ぐエスプレッソセッティング
-
コンビニのコーヒーが日本全国どこでも同じ味になる理由
-
レバー式がかっこいい?! エスプレッソマシンが「見た目重視」でOKな理由
-
コーヒー豆はロブスタが必須? 本場のエスプレッソに近づけるために。
-
美味しいエスプレッソが出ない時の対処法 原因は本当にマシンだけなの?