本場イタリアの基準で学ぶ!良いマシン・悪いマシンの違いは?

こんにちは!サンマルコの毛利です。
私は日々エスプレッソの世界を学びながら、サンマルコというイタリアのエスプレッソマシンブランドを広める仕事をしています。
今回のテーマはズバリ「良いエスプレッソマシンと悪いエスプレッソマシン」。
先日とあるバリスタの方とお話した内容をもとにまとめていきましょう。
カフェ開業を目指す方や、これからエスプレッソマシンを導入しようと考えている方のヒントになれば嬉しいです。
Contents
良いマシンと悪いマシンの典型的な違いとは?
よくお客様から「このマシンとあのマシン、見た目ではそんなに変わらないのに、何が違うの?」と尋ねられます。
私も自分で扱うマシンを選定するうえで、数々の機種を触り、いろんな専門家やバリスタさんから意見を聞いてきました。
結論、その中でしばしば挙げられるキーワードが「馬力」です。
すなわちコーヒー抽出の安定感やパワーの総称ですね。
たとえば、抽出温度や圧力が安定しないマシンは、どうしても味にブレが出やすい。
抽出温度が狙った88℃から2〜3℃以上ズレたり、9バールで抽出するはずが圧力が落ち込んだりする現象です。
この「馬力の低下」はボイラーやポンプの性能、そして設計に起因する場合が多いんですね。
さらに「グラインダーの挽き目が合わない」「粉量のばらつきが出る」などの要因も、結局はマシン側の仕様や使い勝手に左右される部分があります。
もちろんバリスタさんの腕も大切ですよ。
ただ、機械的な側面も外せないのです。どうしても限界がある機種を使うと、いくら優秀なバリスタさんでも安定した抽出が難しくなってしまいます。
イタリアエスプレッソ協会の定義に見る“基準”とは
下記の表が、エスプレッソ抽出の基準値です。
イタリアエスプレッソ協会(Istituto Nazionale Espresso Italiano)が定めるものですね。
カフェ開業を目指す方の中には「なんとなく温度は90℃前後?」「なんとなく圧力は9〜10バール?」くらいの認識で始めるケースもあるかもしれません。
無理にハードルをあげようとは私も思いません。カフェって夢があるから、たくさん実現されると幸せですよね。
しかし、本当に美味しいエスプレッソを出し続けるためには、こうした指標をきちんと理解しておくことが大事なのです。
パラメータ | 基準値 | 許容範囲 |
使用するコーヒー粉量 | 7g | ±0.5g |
抽出温度(抽出口) | 88℃ | ±2℃ |
カップ内の飲料温度 | 67℃ | ±3℃ |
抽出圧力 | 9バール | ±1バール |
抽出時間 | 25秒 | ±5秒 |
抽出量(クレマを含む) | 25ml | ±2.5ml |
この数字だけ見ると、大したことがないように思えるでしょうか…?
しかし実際には、こうした数値を厳守しようとすると、マシンには相当な馬力と安定性が求められます。
とくに一度に大量の注文が入るようなお店では、抽出を連続して行っても温度と圧力がほとんどブレないような設計が必要です。
ここでボイラータンクのサイズや内部構造の違いが大きく影響してくるんですよね〜。
エスプレッソマシンは2連と3連どっちがいい?問題
次に、多くのカフェオーナー志望の方が迷うのが「2連にするか、3連にするか」という選択です。
単純に考えれば、3連のほうが同時に抽出できる量も増えますし、馬力があるので「大は小を兼ねる」のではないかと思うかもしれません。
しかし実際には、3連を完全に使いこなすには、
・それなりの人員(人数)
・提供のスピード
が求められます。
3連は同時に3杯分を抽出できるメリットがある反面、オペレーションが遅いと一方で抽出を待ち続けるグループヘッドが余ってしまう。
外観的には迫力と存在感が増す一方で、
・店内スペースを大きくとる
・エスプレッソ抽出のテンポが追いつかないと逆に効率が落ちる
ということもありえるのです。
日本のマーケットを考えると、テイクアウト中心のお店や、ものすごい回転数を求めるケースを除けば、「2連マシン」で十分対応できる場合が多いと感じます。
2連ならグループヘッドの数は少なくても、温度・圧力が安定していれば、すばやく連続抽出できますし、抽出時に発生するブレも抑えられる。
それこそ「馬力の強い2連マシン」を選べば、ほとんどの用途をカバーできるでしょう。
3連エスプレッソマシンの演出効果
もちろん、3連マシンを導入するメリットもあります。
特に大きな店舗や、ラテアートのイベントなどで複数のバリスタさんが同時に作業する場合には有効。3連は圧倒的なパフォーマンスを発揮します。
さらに、カウンターに置いたときの「映え」や「重厚感」という演出効果は抜群なんです。
海外のバリスタチャンピオンの競技映像などを見ても、3連を自在に操る姿は圧巻!
だからこそ、バリスタさん自身が手際良く作業を回せるかが鍵です。
事実「宝の持ち腐れ」になるケースも多いんです。いざ営業が始まってみると2連分しか回っていなくて、せっかくの3連が一つずっと空いている……なんて話は珍しくありません。
結局は「バランス」が大事で、実際のお店の客層や客単価、回転率を踏まえたうえでマシンを選ぶことが成功への近道です。
カフェ開業を考えたときのマシンの選び方
私がカフェ開業を検討されている方と話すとき、まずお伺いするのがこのあたりです。
「どのくらいの席数を想定していますか?」
「ピークタイムに1時間あたり何杯くらい出したいですか?」
「お客さんはテイクアウト中心ですか?それとも店内滞在型ですか?」
というのも、マシンの選択(特に2連か3連か)は、将来的な運用を左右する重要事項だからです。
<小規模〜中規模店の場合>
2連で十分対応できることが多い。人員の配置やカウンターの広さを考えても、2連のほうが扱いやすいケースが多々ある。
<大規模店やイベント重視の場合>
3連マシンで華やかさや同時抽出数を重視することも選択肢。ただしバリスタの人数や作業の熟練度が追いつかないと、宝の持ち腐れになる可能性も。
また、エスプレッソマシンはかなり重量があり、サイズも大きいので、設置場所や電源容量(単相200Vや三相200Vなど)の確認も重要です。配管や排水の位置も慎重に検討する必要があります。
良いマシンを選べば、腕と想いを発揮できる
良いマシン・悪いマシンでは馬力が違う。
そんな出発で記事を書き始めてみましたが、結局のところ「良いマシン=自分のお店に合ったマシン」と言えるかもしれません。
馬力や連数が大きければ最強というわけでもなく、逆にコンパクトすぎるとピーク時に回しきれない。そこに自分自身やスタッフのスキルを掛け合わせて、ちょうどいいバランスを見つけることがカフェ成功への大きなステップになると思います。
私はサンマルコのエスプレッソマシンを扱っている立場です。もちろんサンマルコの製品を購入いただきたいです。ぜひご購入ください!
という本音はさておき、サンマルコに限らず「本当に自分の店に合ったマシンはどれか?」という視点で選ぶことが重要だと考えています。
もしこれからカフェを始める皆さんが、「何を基準にエスプレッソマシンを選べばいいんだろう?」と迷われたときには、ぜひ今回のポイントを思い出してみてください。
馬力や連数だけでなく、お店の客層・提供数・スペース・スタッフの動き方なども合わせて考える。そのうえで、可能ならば実際の抽出テストや試飲をして、味の仕上がりを確認するのがベストです。
私はこれからもエスプレッソの世界をさらに深く学びながら、お客様に最適なマシンとカフェスタイルを提案していきたいと思っています。
皆さんも、ぜひエスプレッソの奥深い魅力を一緒に探求していきましょう。本格的なカフェを目指すなら、まずは「馬力とバランス」を意識したマシン選びから始めてみてはいかがでしょうか?
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