コーヒー豆はロブスタが必須? 本場のエスプレッソに近づけるために。

こんにちは!サンマルコの毛利です。
エスプレッソといえば「深い苦味」「濃厚なクレマ」が魅力ですが、日本ではスペシャルティコーヒーのブームもあり、「酸味」を前面に打ち出したコーヒーが好まれる傾向が強いですよね。
実際、私のところにも「カフェを開業するなら、フルーティーな酸味がある豆のほうがトレンドに乗れるのでは?」という相談がよく寄せられます。
ところが、「本場イタリアのようなエスプレッソ」を目指すなら、実は“ロブスタ豆”が欠かせないんです。
「え、ロブスタ? それって安い豆って聞いたけど?」と思う方もいるかもしれません。
日本のコーヒー業界では、アラビカ種のほうが「高品質」「繊細な香り」として扱われ、ロブスタ種は「やや粗悪」「大量生産向き」といったイメージが先行しがち。
でも、本場イタリア式エスプレッソにはロブスタの“力強い苦味とボディ感”が重要な役割を果たします。
意外かもしれません。本物のエスプレッソには、ロブが必要なのです。
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「酸っぱプレッソ」と「本場エスプレッソ」
まずは日本で広く親しまれているスペシャルティコーヒーの流れから見てみます。高品質なアラビカ種を浅め~中煎りで仕上げ、豆本来のフルーティーな酸味を引き出す。これはこれで美味しいのですが、エスプレッソとして抽出した際「酸味が強すぎる」ケースがあるんですね。
私が冗談交じりに「酸っぱプレッソ」と呼んでいるのが、まさにこのスタイル。好きな方はハマりますが、「エスプレッソは苦味をしっかり味わいたい」という人からはちょっと敬遠されがちです。
一方、イタリアでは濃厚な苦味を押し出したエスプレッソこそが一般的。立ち飲みのカフェの多くで豆がブレンドされていて、実はその中には必ずといっていいほどロブスタ豆が混じっています。
アラビカがベースだとしても、ロブスタの存在が飲みごたえを生み出し、香味をぐっと厚くする。これが「本場エスプレッソ」の大きな特徴なんです。
万人受けする味にロブスタは入れにくい
「本場の味を目指したい」といっても、大手コーヒーメーカーの豆をそのまま使えばいいのでは? という声もあります。
もちろん大手にかぎらず、流通している豆やシステムにはそれぞれ強みがあり、一概に否定するものではありません。
ただ、大手メーカーのブレンドは多くの場合、極端にロブスタを増やしたり、煎りを深くしすぎたりはしにくいんですね。全国規模で安定供給する必要があるからです。
万人受けする方向に調整されていることが多いわけです。
それに対して「味の本質」にまで踏み込むと、「もっとロブスタを増やしてガツンとした苦味を出したい」「深煎りでコクを出すタイミングを変えたい」といった細やかな要望が出てきます。
そこまでやるとオリジナルブレンドの領域になり、大手の既製品だけではカバーしきれない部分が出てくるんですね。こうした味へのこだわり自体が、チェーン店や大手との大きな差別化要素になります。
ロブスタがカギを握る本場ブレンドのポイント
ブレンド比率で苦みとボディを演出
ロブスタを30〜50%ほど配合するケースがイタリアでは珍しくありません。実際に私が現地のカフェを訪ねたときも、アラビカとロブスタを1:1で混ぜるようなところも存在しました。
こうすると「苦味」だったり「ボディ感」がはっきり感じられ、ショットサイズでも満足度の高いエスプレッソが生まれるんです。
焙煎度合いを意識する
ロブスタを使う場合、多くは深めの焙煎を選びます。浅煎りだとロブスタ特有の硬い風味が目立ちすぎることがあるからです。
イタリアでいう「イタリアンロースト」まで振り切るお店も少なくありません。深煎りならではの苦味や甘みがエスプレッソに最適化されることで、本場っぽさがぐっと増します。
グラインダーの性能と挽き目調整
深煎り豆は油分が多く、ロブスタが混ざるとさらに粘度が上がることがあります。そのため、グラインダーの刃やクリーニング性能が重要になってきます。
挽き目がブレれば抽出にも影響し、狙った苦味やコクが出にくくなるので、「エスプレッソマシンはもちろんだけどグラインダーも良いものを選んでほしい」と私はよくアドバイスしています。
なぜエスプレッソには“豆”や“焙煎”が大切なのか
余談ですが「家庭用マシンを使っているけど、どうも美味しいエスプレッソが出ない」という悩みをよく聞きます。
断言します。それは「マシンが悪い」とは限りません。
ほぼ間違いなく「豆側」の要素が大きいんですよね。
とくに深煎りベースのロブスタ入り豆は、少しでも鮮度が落ちているとエスプレッソ特有の「濃厚な苦味」が感じにくくなります。代わりに雑味や酸化した風味が強調されてしまうことも。
・鮮度が命
豆は焙煎後の時間経過による劣化が激しい飲み物です。深煎りでも油分が酸化し、香りが飛ぶのはあっという間。
・焙煎度と抽出条件
深煎りにしたからといって、誰でも本場の苦味が出せるわけではありません。豆の特性を把握しながら焙煎度合いを決め、それに合わせて抽出時間や圧力を調整する必要があります。
・柔軟なブレンドの調整
広く流通している豆のブレンド比率や焙煎度合いに縛られず、自家焙煎や個人焙煎所との連携でロブスタを活かせるブレンドを探すのもアリです。こうした自由度こそが、カフェ開業希望者や個性派カフェにとって最大の強みだと思います。
意外と大事なロブスタ豆が、“本場エスプレッソ”の鍵
「エスプレッソ=アラビカ種」という先入観があると、ロブスタ豆は軽視されがちです。
私も新規オーナーさんに「ロブスタが必要なんですよ」とお伝えすると「え、そうなの?」と驚かれることが少なくありません。
ですが、ロブスタが持つ苦味やクレマの厚み、ボディ感をいかに活かすかが、イタリアンスタイルの要と言えます。
もちろん、「酸っぱいエスプレッソが好き」という方や、「フルーティーなスペシャルティを打ち出したい」という方もいらっしゃるでしょう。
ただ、「本場のガツンとした苦味」に近づけたいなら、ロブスタは無視できない存在です。
ぜひ一度、ロブスタを含むブレンドや深煎りを試してみてください。思いがけない力強さに「こんなコクがあったのか!」とびっくりするはずです。