プロが解説!「11時以降カプチーノNG」の理由と、日本でのカフェ経営のヒント

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プロが解説!「11時以降カプチーノNG」の理由と、日本でのカフェ経営のヒント
こんにちは!サンマルコの毛利です。
カフェを開業する上で、美味しいコーヒーと同じくらい大切なのが、コーヒーを取り巻く「文化」を深く理解することです。
お客様との会話を豊かにし、お店の雰囲気に深みを与え、時には新しいメニューのヒントにもなるからです。
そこで今回は、コーヒーの本場・イタリアに古くから伝わる、ある「謎のルール」について掘り下げてみたいと思います。
イタリア人は、午前11時以降にカプチーノを飲まない?
「え、どうして?」と思われた方も多いでしょう。
こんなに美味しいカプチーノを、なぜ時間を区切って飲む必要があるのか。
そもそもカプチーノは、どういう位置付けになっているか?お伝えします。
皆さんに大人気の「カプチーノ」は、エスプレッソに約120mlのスチームミルクを注いだもの。
面白いことに、本場イタリアでは、日本で人気の「カフェラテ」よりも、このカプチーノの方が圧倒的に多く飲まれています。
イタリアの朝の風景といえば、バール(日本の喫茶店と立ち飲みバーが融合したような場所)のカウンターで、焼きたてのブリオッシュ(甘いパン)を片手にカプチーノをさっと飲む、というのが定番中の定番なのです。
彼らにとってカプチーノは、一日の始まりを告げる象徴。
にも関わらず、そのスイッチはなぜか「午前11時」を過ぎると、多くのイタリア人によってオフにされてしまう…
なぜなのでしょうか?
理由その1:ミルクのせい
1つ目の理由は、非常にシンプルです。それは「食事の後に飲むには、牛乳は重すぎる」という感覚。
イタリアのランチは、コース仕立てでしっかり食べることが多い文化です。
ボリューム満点の食事を終えた後に、ミルクたっぷりのカプチーノを飲むとどうなるか…想像がつきますね。そう、胃がもたれてしまうのです。
私も35歳を超えたあたりから、この胃もたれとは友達です(笑)
牛乳が身近な日本人からすると、あまりピンと来ないかもしれませんが、彼らにとっては、食後のドリンクはあくまで食事をすっきりと終わらせるためのもの。
ミルクのまろやかさよりも、キレのあるエスプレッソが求められる、というわけです。
<ワンポイント>
これは、カフェのメニュー提案にも活かせます。
ランチセットの食後のドリンクとして、カプチーノやカフェラテと並んで、小さなカップで提供する本格的なエスプレッソを「食後におすすめです」と一言添えて提案してみる。
それだけで、お客様は「お、この店主は分かっているな」と感じてくれるかもしれません。
理由その2:遺伝によるもの
2つ目の理由は、遺伝です。
イタリア人には、遺伝的に「乳糖不耐症」の人が多いという事実があるんですね。
乳糖不耐症というのは、牛乳に含まれる乳糖をうまく分解できず、お腹がゴロゴロしたり、気分が悪くなったりする体質のこと。
酪農が盛んで、古くから乳製品を常食してきた北欧の人々と比べ、温暖な南欧ではその体質を持つ人が比較的多いと言われています。
日本でも最近は、学校給食の牛乳の是非が物議を醸したり、健康志向の高まりかソイミルクを選ぶ人が増えたりしていますよね。
それと同じで、イタリアの人々も、自身の体質を経験的に理解しているゆえに「牛乳は朝に少量楽しむもの」と無意識に決めているのかもしれません。
<ワンポイント>
カフェオーナーが覚えておきたいこと。
お客様の中には、好き嫌いではなく「体質的に」牛乳を避けたい方が必ずいらっしゃるということです。
代替ミルクの選択肢を複数用意しておくのは、今やお客様への大事な「心遣い」。
これがお店の強みになるのです。
理由その3:文化の問題
3つ目の理由は、彼らの生活に根付いた「文化」そのものです。イタリア人にとっては、こんなテンション。
「ミルクは飲み物っていうか、朝食の一部でしょ?」
そういう意識があるんですね〜。
イタリアの朝食はブリオッシュとカプチーノというのが鉄板。
でも正直に言って、これだけでは少しボリュームが足りませんよね。
彼らの朝食は、日本人から見ると質素です。
だからこそ、カプチーノに含まれるミルクが重要。
・たんぱく質
・脂質
・カルシウム
などを補うための重要な栄養源としての役割を担っているのです。
つまり、彼らにとってランチ後のカプチーノは奇妙かも。
日本人の感覚で言えば「昼定食を食べ終わった後に、もう一度ご飯と味噌汁を頼む」ような、「え?そこで?」という感覚なのかもしれません。
理由その4:邪魔者だと思われている
最後の4つ目の理由。これは、イタリア人の食後の一杯に対する先入観とも言えるものです。
「ミルクが、カフェインの持つ消化促進効果を邪魔してしまう」と信じられているんですね。
しっかりとしたランチを食べた後、彼らが求めるのは胃をすっきりさせること。
そのために、食後にはキュッと一杯、エスプレッソを飲むのが定番です。
カフェインには胃酸の分泌を促し、消化を助ける働きがあると言われていますが…これがイタリア人には余計。
「ミルクの脂肪分が胃に膜を張って、その効果を妨げてしまう」と考えているわけです。
科学的な真偽は専門家に譲りましょう。私も調べたもののわかりません(笑)
ただ、大切なのは「彼らが文化としてそう信じ、実践している」という事実です。
だからイタリアの食卓の「シメ」は、絶対にエスプレッソ。
ミルクの入る余地はない、ということなんですね。
午後にカプチーノを注文してみると…?
ここまで4つの理由を解説してきました。
「じゃあ、もしイタリアのバールで午後に『カプチーノください』って言ったら、怒られるの?」と心配になった方もいるかもしれません。
ご安心ください。答えは「NO」です。
実際に注文してみると、バリスタは「Wow! え?もう午後だけど…いいの?」と、少し驚いた顔をするかもしれません。
しかし、メニューにある限り、ちゃんと美味しいカプチーノを作って提供してくれます。
結局のところ、文化や習慣は尊重すべきものですが、個人の自由もまた大切。
私もイタリアに出張していた頃、どうしても午後にカプチーノが飲みたくなって、恐る恐る注文したことがあります。
その時のバリスタの不思議そうな、でも優しい笑顔は今でも忘れられません。
…本音を言えば、「飲みたいもん飲ませてよ!」って思いますけどね?
コーヒー文化を学ぶことは、お店の武器になる
今回は、イタリアの「11時以降カプチーノNG」という謎ルールについて深掘りしてみました。
この話から、カフェオーナーである(或いはこれからオーナーになる)皆さんが学べることは何でしょうか。
私が大事だと思うのは「対話」です。
コーヒー文化の背景を知ることで、お客様との何気ない会話に深みが生まれます。
コーヒーが好き、エスプレッソが好き、という方々は常にアンテナを張っているからこそ、「この人は本当にコーヒーが好きなんだ」とすぐに察知するんですよね。
加えて大切なのは、海外の文化をただ真似するのではなく、日本の文化やお客様のニーズに合わせること。
自分のお店ならではのスタイルとして昇華させることです。
固定観念に縛られず、しかし文化へのリスペクトは忘れずに。
美味しい一杯の先にある、豊かなコーヒー体験をお客様に提供できる、そんな素敵なカフェを創り上げてください。
心から応援しています!
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