66mmの理由。サンマルコが長年守ってきた“味の土台”

こんにちは!サンマルコの毛利です。
エスプレッソやコーヒーの奥深さをお伝えすべく、今日もブログを更新しています。
最近は、カフェ開業を目指す方から「味の安定性」に関するご相談を受けることが増えてきました。
そんな中で、私自身もあらためて考えさせられたテーマがあります。
それが、「なぜ、サンマルコのバスケット径は、ちょっと小さいのか?」ということです。
…えぇ、かなりマニアックな内容かもしれませんけども。笑
というわけで今回は、
ポルタフィルターに装着する“バスケット”に焦点を当てて、その深さや直径がエスプレッソの味にどんな影響を与えるのか。
そしてサンマルコがその形状を変えずに守り続けてきた理由について、お話ししたいと思います。
Contents
バスケットの形状がもたらす味への影響
エスプレッソの味わいは、豆や焙煎、挽き目、温度や圧力など、さまざまな要素の組み合わせで決まります。
そのなかで「バスケットの形」は見落とされがちですが、実はとても大切な部分です。
たとえば、
- バスケットが深いと粉の層が厚くなり、お湯がじっくり通るため、抽出が安定しやすい
- 浅いバスケットでは湯が早く抜けてしまい、味のムラや過抽出のリスクが高まる
- 外径が小さいと粉が中心に集まりやすくなり、圧力が均一にかかる傾向がある
…などなど。
こうした形状の違いが、香りや口当たり、味のバランスにまで影響してくるんですね~。
サンマルコのバスケットはなぜ独特なのか?
サンマルコのバスケットは、業界のなかでも少し珍しいサイズ感を持っています。
- 外径:66mm(一般的なバスケットは70mm前後が多い)
- 深さ:シングル26mm、ダブル32mm
- 内径(ホルダー):約54.5mm
- 穴径:0.3mm
- 穴の範囲(開口部):約44mm
そう、サンマルコのバスケットのサイズは「ほんの少し小さく、深い」。
しかし実は、ここにこだわりが詰まっているんです。
まず、
この外径66mmという設計により、粉が中央に集まりやすくなります。
結果として、抽出時に圧力が均等にかかりやすくなるため、味が安定しやすいんですね。
さらに深さがあることで、粉の層にも厚みが生まれ、ゆとりある抽出がしやすくなります。
つまりサンマルコのバスケットは、「深さ」と「圧力のかかり方」の面で、レバーマシンとの相性がとても良いんです。
レバーマシンでは、抽出の後半にかけて、圧力がゆるやかに下がっていきます。
このとき、深さのあるバスケットだと、粉にじんわり均等に圧力が伝わりやすくなるんですね。
お湯が焦らず、ゆっくり通っていく。
そのおかげで、雑味の少ない、まろやかな味になりやすいんです。
レバーの動きと、バスケットの形が、ちょうど噛み合うようにできている。
サンマルコは、バスケットの設計が未だに昔から変わらない理由って、単なる伝統ではなく、「この形こそが理にかなっている」という判断に基づいているのかもしれません。
さらに見逃せないメリットも
深めのバスケットはクレマの形成にも有利です。
湯が均等に行き渡るため、香りを閉じ込めたまま、豊かなクレマを抽出することができます。
エスプレッソの第一印象を左右する「見た目」にも、この構造がしっかりと活きています。
また、日本人初のバリスタ・マエストロの横山千尋さんも、
「サンマルコのポルタフィルターは径が小さいのでタンピングしやすい」
とInstagramで話されていました(https://www.instagram.com/reel/DHxwfnaT_or/)
それは単なる使いやすさではなく、こうした味づくりの工夫と密接に結びついているのです。
バスケット構造が支える日々の品質
サンマルコのマシンは、イタリアン・エスプレッソ・インスティテュート(IEI)の認定を受けています。
この認定は、エスプレッソにおける「一貫した味と品質」を安定して出せる機器にだけ与えられるものです。
でも、味の安定って、そう簡単なことじゃありません。
たとえば、朝の開店直後と、ピークタイムの連続抽出では、同じ設定でも微妙に条件が変わってくるんです。
スチームの余熱、豆のコンディション、水温のブレ…。
そんな“揺らぎ”の中で、いつでも変わらず美味しい味を出すには、マシンの設計に秘密があります。
サンマルコでは、そのカギを“バスケットの構造”にまで落とし込んでいるんです。
- 外径が小さいから、粉が中央に寄りやすく、圧力が均等にかかる
- 深さがあることで、粉の層に厚みが出て、湯が焦らず通る
- 穴の大きさや範囲も緻密に調整されていて、雑味の少ない味を実現しやすい
こうした設計の積み重ねが、「あのお店の安定した味」を支えているんですね。
まとめ:変えなかったのではなく、変える必要がなかった
サンマルコのバスケットは、何十年にもわたって設計を大きく変えていません。
それは単なる伝統ではなく、「この形こそが理にかなっている」という判断だったのだと思います。
外径66mmという小さめの設計。
適度な深さと安定した抽出を両立するフォルム。
こうした「変えなかった設計」が、結果的に今なお強みになっているのは、ちょっと面白い話ですよね。
でもこの見えない部分こそが、サンマルコの味の“縁の下の力持ち”なのです。
では、また次回もお楽しみに。
サンマルコの毛利でした。
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