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イタリア国内でも違う!? エスプレッソ文化のトレンド

「エスプレッソはイタリア発祥」とはよく聞きますが、実はイタリア国内でも地域によって好みが異なります。

大きく分けて北と南で好まれる味わいやスタイルが違うと言われており、たとえば「南のほうではロブスタ種を多く配合した力強いエスプレッソが飲まれる」などの特徴がよく語られます。

・北イタリア
ややアラビカ種が多いブレンドが好まれ、まろやかさや甘みを感じるエスプレッソが多いと言われます。近年は健康志向の高まりで、砂糖を入れないブラックで飲む人が増加傾向にあるようです。

・南イタリア
苦味やコクを強調するためロブスタ種を多く使うお店が多いのが特徴です。しっかりした苦味、濃厚なクレマ、そして砂糖を入れてクイッと飲むスタイルが定番だと言われます。

同じ「イタリアのエスプレッソ」でも、こうした好みの幅があり、地域性だけでも盛り上がれる話題です。日本人の感覚では「ひとまとめ」にしがちなイタリアも、国土が広ければ気候も文化も違うわけですね。

カフェを経営していくにあたって、お客さまとの会話に役立つ豆知識です。

 

時代とともに変わるエスプレッソの「トレンド」

エスプレッソそのものの「トレンド」も時代の流れで変わってきました。

私自身、最近イタリアのエスプレッソ協会(エスプレッソ イタリアーノ)のテイスティング講習を受けた際に「30年前のトロトロ濃厚エスプレッソは、いまは少しスタイルが変わってきている」という話を聞きました。

かつては砂糖を入れて味を整えることが前提になるほど濃厚なエスプレッソが広く好まれた時期がありましたが、近年は「できるだけ砂糖を入れず、まろやかさや甘みを豆のブレンドと抽出で引き出す」ことが重視されているそうです。

これはイタリア国内でも健康志向が高まっており、日常的に何杯もエスプレッソを飲むからこそ、砂糖を摂りすぎないように意識する人が増えてきているという背景があります。

また、特定の地域やお店だけで流行していた抽出スタイルが、インターネットやSNSの普及によって瞬く間に他の地域へ広がることも珍しくありません。

「イタリアだから一枚岩」ということはなく、特に若い世代は軽やかな苦味と香りを好み、砂糖なしでスッキリ飲めるエスプレッソを好む傾向もあるそうです。

 

ロブスタ種の再評価:ブレンドが生む厚みと魅力

南イタリアを中心にロブスタ種の使用割合が高いのは昔から定番でした。

ただし「ロブスタ=安物」というイメージを持つ方もいまだに多いのではないでしょうか?

私もカフェ開業希望のお客様と話していると「ロブスタは苦くて雑味が強いんでしょ?」と尋ねられる場面があります。

ところが、イタリアではアラビカ種とロブスタ種をうまく掛け合わせることで、特有の厚みやクレマの豊かさを引き出すという文化が根付いています。

私はテイスティングでロブスタ100%のエスプレッソを飲んだとき、ゴムっぽいような独特の匂いにびっくりしました。正直に「美味しくない」と思ってしまいました(笑)

しかし、ほんの数パーセント混ぜるだけでも全体のバランスがガラッと変わるので、これは香辛料のような「スパイス効果」に近いと感じます。

もちろんロブスタを入れないシングルオリジンのエスプレッソも魅力的ですよ。

でも、イタリアで大手ロースターが培ってきた伝統ブレンドには、何十年・何百年もの研究の結晶が詰まっているのも事実です。

 

ラテアートとイタリア式カプチーノの違い

また、日本では「エスプレッソマシン=ラテアート」というイメージも強いですよね。

SNSやメディアでラテアートの写真をよく見かけるため、「カフェ=アートの美しさで勝負する」と思われる方も多い。私もインスタを見ていると、やっぱり見た目が華やかだと目を引くなぁと思います。

一方、イタリアではアートよりも味を重視したカプチーノが主流です。

競技としてのラテアートは見た目の美しさを競うためにクレマを極力壊したり、スチームしたミルクを回し入れたりするテクニックがあります。

でもイタリア式カプチーノでは、エスプレッソとミルクが理想的に混ざり合うことで生まれる「口当たりのなめらかさ」を大切にするため、あまりクレマを分離させないんですよね。

最近のトレンドとして、「美しさ」よりも「ミルクとエスプレッソの一体感」にこだわったカプチーノを提供する店が国内外で再評価されてきています。

特に、日本には繊細な味を好むお客様が多いので「ちょっとした苦味とミルクのまろやかさが絶妙」「後味がスッキリしていて飲みやすい」と評判になるケースもあります。

SNS映えではなく「味映え」でファンを獲得するという流れが少しずつ起きているのかもしれません。

 

抽出スタイルのバリエーションは一杯でこんなに違う

エスプレッソといっても、豆の種類や配合比率、抽出時間、タンピング圧、さらにはマシンの種類(レバー式かポンプ式か)まで変わると味わいは千差万別。

私が最近参加したテイスティング講習では、同じ豆をあえて異なる粗さに挽いたり、異なる秒数で抽出したものをテイスティングしましたが、それだけで酸味が強調されたり、香りの広がり方がガラッと変わるのが面白かったです。

抽出時間と量の違い


基本的に「25ccを25秒で」など言われますが、たとえば30秒かけて20ccしか落ちなかったら、より濃厚で苦味の強いテイストに仕上がります。逆に、粗めに挽いてスパッと20秒で30cc出してしまうと、薄くて酸味が出すぎる場合がある。

レバー式マシン vs. ポンプ式マシン


レバー式はバリスタが圧力をコントロールしながら抽出するため、より職人的で奥深い味を出せるとするファンが一定数います。一方、ポンプ式は安定した圧力をかけやすく、一定のクオリティを出しやすいというメリットがある。

こうした多様性があるからこそ、「エスプレッソは一言では語りきれない」のです。

カフェを開業する方は、単に「濃いコーヒーを出したい」というだけで終わらず、どのバリエーションをメインに押し出すかを考えてみるのも面白いはず。

あえて細かい抽出レシピを公言せず、お客様に「今日は少し甘みを強調してみましたよ」などと伝えれば会話のきっかけになりますし、「自分の店らしさ」を作る要素にもなります。

 

日本のカフェが取り入れやすいアレンジ

もちろん、イタリアのスタイルを丸ごと真似する必要はありません。日本独自の美意識を取り入れたアレンジがあってもいいと私は思っています。たとえば、

アジアンテイストと組み合わせる


抹茶を少し加えたエスプレッソベースのドリンクや、アジア圏のスパイスをちょっと使うなど、日本ならではの発想で新しいジャンルを作る。

ラテアートとイタリア式カプチーノの併売


飲みやすいデザインカプチーノと、クレマがしっかり残ったイタリア式王道カプチーノの2種類を用意して、お客様に選んでもらう。両極端を試してもらうと会話が生まれ、「全然違う!」という驚きを演出できます。

こうしたバリエーションを楽しむ姿勢こそ、エスプレッソ文化が持っている深みの魅力なのではないでしょうか。

 

エスプレッソは進化し続ける「生きた文化」

一言に「エスプレッソ」と言っても、地域差・時代のトレンド・健康志向・抽出方法など、さまざまなファクターによって変化する「生きた文化」です。

イタリアの北と南だけでも味わいの差があり、トレンドを追ってみると砂糖を入れるかどうかで印象がガラリと変わる。ラテアートへのアプローチが日本や海外とは大きく違う。挽きの粗さや抽出時間を少し変えるだけで驚くほど味わいにバリエーションが出る。

私がエスプレッソの勉強を続けて強く感じるのは、「これが正解だ!」というよりも「基本を知りながら時代や地域に合わせて変化していく」姿こそがエスプレッソの真骨頂だということ。

日本のカフェ開業を考えている方なら、自分のコンセプトに合わせてどんなエスプレッソを提供したいのかを模索してみると面白いでしょうね。

「イタリアに近い味を再現したい」
「あるいは砂糖なしで健康的にアピールしたい」
「ラテアートはSNS映え重視だけど、本場の味も取り入れたい」

そのどれもがエスプレッソのバリエーションとトレンドを取り込む上でアリだと思います。

今まさにカフェ開業を検討している方は、ぜひいろいろなスタイルのエスプレッソを試飲してみてください。

私も日々「こんな仕上がり方もあるのか!」と驚く発見ばかり。奥深いエスプレッソの世界を味わいながら、自分のお店の色をどう作るか、ゆっくり考えていただけたら嬉しいです。

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